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024:【みずうみ】いしいしんじ(河出書房新社)

2007年出版作。とある町の(例のごとく、町の名前ははっきりしない)湖にまつわる話の1章。眠り続ける
人。月に一度水浸しになる町。眠り続ける人の声が聞こえる僕。いつもどおりのいしいしんじファンタジーの世界だ。
ところが、第2章になると、がらりと色合いが変わる。なにこれ? ひょっとして、アムステルダムで書いたわけじゃないですよね。自分の体が広がっていくと感じるタクシー運転手。ときどき口の中から異物が出てくる。で、時間も空間も飛び越えて、話が進んでいくように思えるのは、読み方が悪いの? とても難解。でも面白いけど。
と思ったら、第3章は作家の「慎二」とその妻「園子」、そしてアメリカの友人の話。ひえええ。本人が出てきたよ。小説の中に名前が出てきたのははじめてらしい。さらに地名もはっきり出ていて、これは「ごはん日記」の続きか、とさえ思ったけれど。生まれなかった子供とニューヨークの友人とそのパートナー。それらが、不思議につながっていく。直接つながる話はほとんどないんだけれど。ああ、あのタクシーの運転手も、どこかで「みずうみ」とつながっているのか。えっ? で、みずうみってなに?
とっても高度な感覚の世界にいってしまいました、という感じがする。とうとう具体的な名前と地名を手に入れたのに、かえって抽象的な世界観に至ったっていうところが、やっぱりすごいなあ。このさき、どうなるんでしょう?
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023:【女は胆力】園田天光光(平凡社新書)

戦後初の普通選挙で、女性代議士のひとりとなり、その後園田直氏と結婚、89歳の現在も多くの団体の役員を務める「怪物」おばあさん(失礼!)の半生記。
題名だけ見ると「なんとか力」のススメのような、教条的なものかと思われるが、ほとんどの話は(聞き書きなのだ)代議士になったいきさつやら、夫であり、外務大臣であった園田氏とのエピソード(女性問題ではなかなか大変だったらしい。さすが昔の政治家)、外務大臣夫人時代のエピソード等々、戦後政治の裏話がいっぱいで、それだけで楽しめる。
なにしろ聞き書きですから、「もう、よろしいわよね、時効だから」なんて話もあって、楽しい。
正直言いまして、こういう人が親戚にいたら大変だろうとは思いますが。行動力があるというのは、裏返せば思いつきでなんでもやってしまうということだし。それを「胆力」ということで開き直っているのが、ちょっと大変だけど、読んでる分には、とても楽しい。

022:【いやな気分の整理学―論理療法のすすめ】岡野守也(日本放送出版協会)

落ち込んだときにどうするか、「自分はもうだめだ」などというネガティブな考えをどう排除するか。その一つの方法として「論理療法」を提唱する。論理療法とは、文字どおり「論理」によって、ネガティブな考えを「論破」するというもの。その考え方の「癖」をつければ、ポジティブな性格にかわれますよ、というわけ。
まあ、すぐにそのとおりになるというわけはないだろうけれど、物事を論理的に整理して、自分の考え方が妥当かどうかを分析するというやり方は、悪くはないかな。
どんな新書でもそうだけれど、これを読めばすべてが解決、というものはあり得ないので、ひとつの解決方法として。

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