ジェイ・マキナニーの「ブライト・ライツ、ビッグ・シティ」を読んだ(高橋源一郎訳・新潮文庫)。
ニューヨークを舞台にした、作家を目指す(目指しているのか? なんとなくそうなったらいいなと思っているだけかも)主人公の、ちょっとはちゃめちゃともいえる日常を描いている。ジェイ・マキナニーのデビュー作。
この作品で、マキナニーは「89年代のサリンジャー」なんて呼ばれたらしい。
そうなると「ライ麦畑」と読み比べてしまうでないの。いや、改めて読み直すなんてことはしませんけどね。
たしかに、すくなくともどちらも舞台はニューヨークやし、友達思いやし、母親への愛情なんてのも似ているなあ(曖昧な記憶をもとに書いています)。
しかし決定的に違うこと。
それは主人公が結婚していて離婚して(離婚したのかどうか。ともかく妻には捨てられたらしい)、その妻のことをいじいじと思い続けている、というのは、青春真っ只中で、放校処分になったばかりの「ライ麦畑」とはだいぶ違うし、だいたいあの主人公(なんていう名前やったっけ。ど忘れした)はドラッグなんかには手を出していないし。まあ、時代が違うけどね。

えっと、マキナニーを読んだのはこれが2作目です。前に読んだのは「モデル・ビヘイビア」で、恋人(妻?)に逃げられた、作家志望の雑誌記者の話。って、この「ブライト・ライツ」と設定がソツクリではないですか!

実生活を素材にするとこうなるのかなあ。まあそういう作家、なんでしょうけどね。パーティーの場面なんか、まるっきり同じ空気を感じました。だからダメ、ということではないですけど。

ああ、ひとつ言い忘れ。この小説は完全な私小説なんだけど、自分のことを「きみ(You)」と表現してるんですね。これがこの小説のキモなのかも。
なりたい自分になれない自分、それを別の自分が眺めていて、どこか客観的に見ることで、なんとか自分自身を保っている。ああ、妙な表現ですけど、こういうことで納得できるなあって思います。
誰しも「今のままでない自分がどこかに」と思いたい。だから自分は自分であって「きみ」であるのですね。
そう表現することで、はちゃめちゃな話なのに、どこか冷めたような、静かな空気が流れている。ああ、「静か」っていうことを求めているのかなあ。なにしろ世界一静かでなさそうな町やからね、ニューヨーク。
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