006:【幼年期の終わり】アーサー・C・クラーク(池田真紀子訳・光文社古典新訳文庫)
光文社の古典新訳文庫は、その名のとおり、古典と呼ばれる文学を新しく訳し直しているんだけれど、こういう昔のSFっていうのは、きっと難しいんだろうなあ。状況が、昔と今とではまったく変わっているからね。昔は想像の、空想上の事柄だったものが、今は当然のように世間に広まっている。クラークは、「人工衛星に電波を送って、それを介して世界中で無線回線ができるようになる」と、「空想」していたが、そのとおりの世界になっているのは驚きだ。そういうことがこの「幼年期の終わり」の、特に第1章では書かれている。今の世界を考え合わせると、とても面白い。

宇宙人とのファーストコンタクトから、「種としての」人類の滅亡までを描いた作品で、その着想の壮大さには驚愕する。しかし、ちょっと最後の方、というか、まあ途中からそうなんだけど、宗教ぽい匂いがするというか、どこか「神」を感じさせるものが匂ってくるのですな。もちろん、これは宗教指南書でも黙示録でもないのだけれど。

それと。あらゆる事柄に説明をつけたがるのだね。これはクラークの癖なのかなあ。以前「2001年宇宙の旅」のノベライズを読んだけど、映画ではあえてぼかしてあったことまでも明らかにされていて、ちょっと待ってくれと言いたくなったのだったが、「幼年期の終わり」でも、「そこまで説明せんでも・・・」というところまで説明が加えてあって。まあ、リアリティに富んでいる、と言えなくもないけれど、SF小説として、どうなんでしょう。まあ、最後まで謎は残ったままなんだけど。ここら辺がブラッドベリとクラークの違いかなあ。どちらが好きかは、人それぞれでしょうけど。
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