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【極東セレナーデ】小林信彦(朝日新聞社)

朝日新聞のコラムで、斎藤美奈子氏が「復刊を強く望む」(現在絶版なのだ)と書いてあったのを見て、読んでみたのだ。小林信彦なんて、初めて読む。あ、先日雑誌で「流される」を読んだか。作者に着いて知ってることといえば、「オヨヨ大統領の冒険」の作者で、桂三枝が「オヨヨ」というのをギャグにしたとき、「著作権違反だ」と訴訟になった、ということぐらい。「オヨヨ大統領」シリーズは読んでない。でもこの題名からして、ユーモア作家だろうなあ、ぐらいに思っていた。

さて、「極東セレナーデ」である。話の筋はいたって簡単。二流のエロ雑誌でライターをしていた女の子利奈が、周りの思惑であれよあれよという間にアイドルになっていく、という話。マスコミや芸能界や、その他いわゆる「業界」の裏話のようなものもあって、楽しめる。

だが、これが書かれたのは1987年。ここに書かれてある芸能界やマスコミのアイドル戦略、売り出し戦略が、今とほとんど変わっていないことに、うっすらと寒気がしてくる。
さらに主人公利奈の置かれている状況、その立場も、ほとんど今のアイドルたちと変わらないではないか。
そして、その時代の出来事。航空機の相次ぐ事故(利奈の両親は航空機の事故で亡くなっている)。ハレー彗星に浮かれるテレビ界。ああ、懐かしい。

極めつけは、チェルノブイリ原発事故。芸能プロダクションの思惑通りにトップアイドルとなった利奈に、原発安全キャンペーンのモデルの仕事が舞い込む。「クライアントの思惑」というのが、おそろしい。利奈はこの仕事を受けざるを得ない状況に追い込まれるが。

最後はスカっと終わるので、ご心配なく。そこら辺は真面目な小説じゃないところの強みかな。これが井上ひさしなら、もっと暗いイメージで終わるのだろうが。ちょっとだけ、気持ちいい。

それにしても。今の日本の状況にこんなにぴったりと符合するなんて。復刊を強く望む気持ちがわかる。

どうも最近、うっとおしい空気が蔓延している。原発もだけれど、大阪では教育現場に法律の縛りがかかりそう。政治と教育は別もの、という考え方は古臭いのだろうか。
そういう現状に、「いやです」とはっきりこたえられるだろうか。利奈のように。
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