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青春だぁ!

大学図書館で「鴨川ホルモー」を見つけて、思わず(心の中で)「やたーっ!」と叫びつつ本を手に取ったのだった。
ぶたこが「そんなに慌てんでも・・・」と言ったが。
なにしろ紀伊国屋のベストセラー「キノベス」で、カズオ・イシグロに次いで堂々の第2位という評判の作品。

しかし、題名だけではなにもわからない。「ホルモー」って、何?
あらすじをざっと紹介すると。
二浪して京大に入学した安倍は、葵祭の行列にアルバイトで参加した帰りに、サークル「京大青龍会」に勧誘される。新入生歓迎コンパでの飲み食いだけを目的にサークルの会合に参加するが、そこで同じ新入生の早良京子に一目惚れ。そのままずるずると「京大青龍会」の会合に参加するようになる。
数ヶ月経ったある日、会長のスガ氏から、会の本来の目的が明らかにされる。京大の他、立命館大、京都産業大、龍谷大にも同じようなサークルがあり、その四つの大学間で「ホルモー」と呼ばれる競技を行うのだ。
「ホルモー」とは、相互10人ずつの競技者が、それぞれ100人(匹?)の「オニ」に命令を下して戦い合うというものだ。どちらかが全滅する、あるいは途中で敗北を宣言するまで続けられる。
早良京子への思いをつのらせつつ、何らの行動も起こせないまま「ホルモー」を続ける安倍。しかし、リーダー格の芦屋とのあいだに確執が生まれ、さらにそこに早良京子も加わってきて、ついに安倍は京大青龍会の分裂に踏みきる。
安倍の京子への思いはどうなる? さらに分裂した京大青龍会の「オニ」同士の戦いは?
さらに、「ホルモー」の本当の意味とは? その目的は?

というのは表のストーリー。もうひとつの流れは、サークル内での恋愛沙汰。いかにも大学生らしい(というと語弊があるかも)人間模様が展開されて、それだけでも楽しめる。しかもその人間関係が、秘密の競技「ホルモー」に関わってくるのである。

なんて書いても、どうもこの作品の面白さは伝えようがないなあ。ちょっとだけ面白く説明すると。1000年前から行われてきた(と考えられる)魔界の競技に、否応なく巻き込まれてしまう大学生たちの話、なのだな。
しかしその競技がどうにもユーモラスなので、いろんなところで笑ってしまうのである。しかししかし、物語の終わりの方では、ちょっとぞっとするような「ひょっとして、これが真相?」という話にもつながってきて。ちょっとバラすと、結局のところ、どうして「ホルモー」なる競技をやるのか、やってる本人達にも分からないのだね。でも一生懸命取り組んで、死ぬか生きるかの勝負をしている。

ああ、読みようによっては、運命に左右される人間の愚かさとか、もっと深読みすると、この人生は自分たちが切り開いていると思っているけれど、実はもっと強大な力によって支配されているのかもしれんぞ、という恐ろしさのようなものもあって。
とすると、物語の締めくくりは、ひょっとしたら「それでも、なんとかなるんじゃないか」という希望を描いているのかもしれない。深読みしすぎ?

なんていうのは、今書きながら思いついたのだ。読んでる最中は、ともかくもこの話の展開に「うほほ、うほほ、青春じゃのぉ~」と、おっさん的視点で、ちょっと甘酸っぱい感覚にもとらわれながら読んだのだ。
それにしても、この万城目学という人、文章がうまい。スピーディーさと的確さ、ちょっとしたユーモアのちりばめ方、とても、うまい。すっすっすっと読んでしまったよ。評判どおり。


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